介護士Yの戯言

『マッスルスーツ every (タイトフィット)』の使用レポート。介護現場で6か月使用してみた感想。

介護をしていると腰を始め身体を痛めやすくなってしまいますね。中には全く痛めたことのない逸材がいますが、肉体労働故に介護士の多くは腰痛に悩まされています。

私も職場にマッスルスーツが導入されるまではベルトを着用したり、介助の姿勢を工夫しながら行っていましたが、それでも限界があり、腰への負担を感じていました。

2021年度から私が勤めている職場にも導入されたアシストスーツ。いくつか導入されましたが、今回はその中の1つ「マッスルスーツ Every」というアシストスーツについてのレビュー記事です。

6か月使用してみたところ、移乗介助の負担の軽減が体感でき、腰痛予防にとてもいいと思えるアイテムでした。場面によっては使い辛い場面もありましたが、腰痛予防に効果的と実感できただけでも、使い続ける価値のあるものだと思っています。

私個人の体感と同僚の感想をもとにまとめた記事となっていますが、使用し続けて実際どんな点が良かったか、どんな点が使い辛かったのか紹介していきたいと思います。

マッスルスーツ Every とは?

ダウンタウンの浜田雅功さんがCMをされており、重いものの運搬を手伝ったり、怪獣と戦う姿が映されています。そんな浜田さんが着用しているのは「着る筋肉」をキャッチフレーズに販売している株式会社イノフィスさんの「マッスルスーツEvery」というアシストスーツ。

2021年9月末で販売台数が2万台を超えた今人気のアシストスーツです。

これまで様々なメーカーがマッスルスーツを売り出してきましたがどれも数十万~100万を超えるような高額なものばかりで業務用のものばかりでしたが、このマッスルスーツEveryは価格が約15万と一般家庭でも購入できる価格帯での販売がされています。

このマッスルスーツは非電動でリュックのようにさっと背負い、両足にパッドをかけるだけで使えるという着用のしやすさに加え、一般家庭でも購入できる価格帯という点が人気急上昇の理由かもしれませんね。

使用する際は背負い、パッドを装着して、手動式の空気入れを使い人工筋肉の補助力を自分好みに調整していきます。

マッスルスーツEveryの仕様

タイプソフトフィットタイプ
タイトフィットタイプ
サイズ
(推奨適応身長)
S-Mサイズ:150cm~165cm
M-Lサイズ:160cm~185cm
本体重量3.8kg
駆動源圧縮空気
アクチュエーターMcKibben型人工筋肉
圧縮空気供給方法手動式空気入れ
補助力25.5kgf(100Nm)
仕様環境温度-30度~50度
防塵・防水性能IP56
本体寸法
(高さ×幅×奥行)
S-Mサイズ:805mm×465mm×170mm
M-Lサイズ:840mm×465mm×170mm


防塵・防水性能について、防塵性能は0~6までの7等級、防水性能は0~8までの9等級あり、数字が高くなるにつれて性能が良いとされ、「IP56」は防塵性能が5級(有害な影響が出るほどの粉塵が製品内に入らない)、防水性能が6級(強い噴流水による有害な影響はない)という意味です。

防水性能は4級から生活防水とされており、介護現場での入浴介助といった濡れてしまうような場面でも使用することが可能ですね。

マッスルスーツEveryの種類

マッスルスーツには上の仕様にあるようにソフトフィットタイプタイトフィットタイプの2種類があります。

●ソフトフィットタイプ
ももとパットの間にゆとりがあり、歩きやすいタイプです。スーツと身体の間にゆとりがある為、スーツのアシストが発動するまでが少し遅めです。

どれくらいからスーツのアシストが発動するのかというと、35度まで屈まないと補助力が発生しない仕組みとなっていて、中腰の姿勢で仕事する方には効果が薄れてしまいます。

床から腰や胸の高さまでの荷物の上げ下ろしが多くて、重いもの持ちながら動き回るよーって人に向いているそうです。CMでも工場のような場所で使用されていますが、農家さんや配送業のような方がこれに当てはまりますね。

●タイトフィットタイプ
ももとパットがしっかり密着するので、歩きにくいタイプです。少し屈むだけで補助力が発生するので、移動には不向きです。歩くこともできなくはないですが、足に負荷がかかるので逆に疲れてしまいます。

中腰姿勢になることが多くて、あまり長く移動しない作業が多い場合はこちらのタイプがあっていると思われます。

マッスルスーツeveryの使用感

ここからは私個人と同僚の使用感をまとめた内容となっています。

介護現場では腰痛予防で持ち上げない介護が推奨されており、リフトやスライドボードなど様々な便利アイテムがあっても中腰姿勢になる場面は必ずあり、腰への負担を無くすことは不可能です。

でもこのマッスルスーツを着用して介護すると腰への負担をほとんど感じず、腰痛への不安は以前よりなくなりました。

現在タイトフィットのタイプを使用して介護の仕事をしているのですが、移乗介助など屈むと上半身が後ろに引っ張られるような感覚で、1日に何十回と中腰姿勢になることが多い職業柄、正直なところ介助がかなり楽になったと実感しました。

介護に限らず中腰姿勢になることが多い職業の方にはとても役立つと思います。

●移動には不向きと言うけれど、実際どんな感じなのか。
タイトフィットタイプは移動には向かないので、スーツを装着し空気圧縮した状態で移動すると脚の筋トレをしているみたいな感じでした。足を前に出すと補助力が発生し、前に出した脚が補助力で後ろに引っ張られる感じになるので、足に重りつけて動く筋トレのような状態です。最初は「これ逆に疲れちゃうんじゃない!?」と思っていました。
移動が必要になったら空気圧縮を解いて移動すればいいんじゃないかとも思うのですが、介護現場だと移動して介助、移動してまた介助を繰り返しますので、その都度ポンプで手動で空気圧縮するのは結構手が疲れてしまうんじゃないかと思っていましたが、その不安通り繰り返すと手が疲れます。

ただ慣れてしまえば、空気圧縮も短時間で苦痛なく行えますし、空気圧縮した状態での移動もあまり気にならなくなりました。

●使用していて不便に感じたこと4選
これは施設によると思うのですが、私が使用した環境が従来型の特養で多床室って大きい車いす置くと結構狭いんです。移乗しようとベッドに車いすを横付けして、車いすとお隣さんのベッドの間を通ろうとするとどうしてもぶつかったりと通りづらく感じました。

タイトフィットタイプはももにパッドが密着するので密着部分が暑くなるので夏場や汗っかき、暑がりの人は少し気になるかもしれません。

サイズは身長にあわせたものをご使用ください!
目安で見ると私にとってはサイズの小さいS-Mも使用してみたところ、身長での推奨サイズよりも小さいサイズを着用するとももに当てるパッドが鼠径部あたりに変に食い込むことがあり、体勢によってはパッドが変にあたり痛みや違和感を生じます。

推奨サイズより小さいサイズを着用していた同僚の男性職員はもものパッドが股に変に食い込んで痛い思いをしたことがあったそうで、それからは推奨サイズを守って着用していました。

女性は重いと感じるかもしれない。
軽量でも約4kgありますから、私の同僚女性は重い感じる人も多くいました。使えないほど重いということではなさそうですが、小柄な女性はもしかしたら使いたがらない人がいそうな印象です。

まとめ

使い始めは軽量とは言え約4kgありますし、動きづらさなど慣れない部分があるかもしれませんが、使い慣れてくると腰痛予防を実感できる良い製品だと思います。

腰痛で悩んでいる介護士さんは大勢いるので、アシストスーツを検討している事業所さんにはぜひ検討して頂きたい製品でした。
それでも約15万円する大きな買い物ですから、気になる方はまずはレンタルを試してみてはいかがでしょうか。