介護の仕事

介護の2025年問題とは?

2022年4月、新年度が始まりましたね。介護士を長くしているせいか曜日も日付も年度もど忘れしてしまう私ですが、人手不足がどんどん深刻化していき、今後をことを考えていた中でふと1つのことが頭に思い浮かびました。

今の日本は高齢化社会真っ只中、ちょうど3年後に迫る「2025年問題」です。

介護業界だけではなく、医療業界などにも影響があるといわれていますが、そもそも「2025年問題」とはなんなのでしょうか。

2025年まであと3年しかないけど、どうしたらいいの?
問題って言われてるけど何が起こるの?
介護業界って今でも人手不足で大変なのに今後どうなっていくの?

今回はそんな疑問を解決できるよう介護の2025年問題を解説していきます。後半は個人的見解によるものが多いため、参考程度に読んで頂けたらと思います。

2025年に起こること

2025年は第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代と言われている人たちが後期高齢者となる年です。

第1次ベビーブームとは1947年から1949年に生まれた人たちのことを言い、団塊の世代とも呼ばれ、この3年間は出生数が毎年260万人を超え、合計約805万人いるとされています。
参考)内閣府 出生数、出生率の推移

団塊の世代が後期高齢者になると後期高齢者人口が2197万人になり、その人数全員というわけではないと思いますが、2025年以降介護業界には利用者として多くの方が流れ込んでくると思われます。

また、2025年には高齢者人口が30.3%になり、日本人の3人に1人が高齢者という割合になるそうです。高齢者人口のピークは2042年と予想されており、その時代には高齢者1人を若者1人が支えるという無茶ぶりとも言える厳しい社会になるとされています。

今は若者約3人で高齢者1人を支えている社会ですが、働き世代の負担は今後も増えていくことは避けられないのではないかと思います。

2012年2015年2025年2050年
65歳以上高齢者(割合)3058万人(24.0%)3395万人(26.8%)3657万人(30.3%)3626万人(39.4%)
75歳以上高齢者(割合)1511万人(11.8%)1646万人(13.0%)2179万人(18.1%)2401万人(26.1%)
参考)厚生労働省-今後の高齢者人口の見通しについて

2025年問題で課題となっていること

一番の課題はやはり人材不足です。

人材不足は様々な問題を生じさせます。具体的には・・・

●介護サービスを利用できない高齢者が出てくる。
職員の負担が増してマンパワーの面から受け入れられなかったり、人員配置基準を満たせず報酬の減算を避けるために空きがあっても受け入れ一時中止したりと、介護難民化する高齢者や家族が増える可能性があります。

●介護離職が更に増える可能性がある。
人材不足ということで職員個々の負担が増えていきます。その負担増から身体や心を壊してしまったり、見切りをつけて離職が増えることが考えられます。

今のコロナ禍でも感染対応しながらの介護は大変ですよね。マスクしながらの入浴介助、防護服を着用しての様々な介助、施設に引きこもるしかない利用者の認知症の進行は急激に・・・。コロナはいつか終息するとはいえ、人手は足りないけど利用者がどんどん増えていくって、今思い浮かべるだけで無茶ぶりですよね。

●事業の継続が困難になる可能性。
離職や利用者数増加による人手不足という課題から人員配置基準を満たすことが難しい事業所が増えてくるかもしれません。新型コロナウイルスによって一時的に人員配置基準を満たせない場合は減算免除されるようですが、人員配置基準を満たせない場合は報酬が7割に減ります。

人員配置基準を満たせない場合
・報酬の減算
・指定取り消し
・報酬の返還
などの重い処分が科せられてしまうことがあります。指定取り消しや返還の前に報酬3割カットというだけで施設経営にかなりの大打撃になりそうな気はしますが・・・。


2つ目に介護難民が増え、親の介護の為に仕事を辞めざるを得ない若者や独居老人が増える可能性
今後福祉の人手不足が改善されないことで、入所だけでなく通所の介護サービスを希望通りに利用できなくなる可能性があります。福祉サービスを利用できないということは家族が介護するということになりますよね。家族の介護が必要なレベルでなくても、介護サービスを利用できないことで自力での一人暮らしを迫られる可能性があります。

家族で介護をする場合、小まめに介護が必要だったり、見守りしなければいけなかったり、緊急時にすぐ駆けつけなければいけなかったりで家族の仕事にも影響がでてきます。介護の為に仕事を変えたり、雇用形態を変更するという決断をする家族が増えるかもしれませんね。

在宅での家族介護を余儀なくされる方が増える可能性があることから、今後企業は介護をしながら働ける環境作りを求められてくると思われます。介護休暇の充実やリモートワークの整備など、介護をしながら働く環境ができれば、介護による離職をそれなりに防げるのかもしれませんね。

今後の介護業界

ここからは現状の課題と実情から、今後どうなっていくかの個人的な考えです。

しかし今後、人員配置基準がどう変わっていくかにもよりますが、利用者が増えて職員が横ばいか減る形は間違いないので、介護業界としては厳しくなることは明らかです。

職種別の今後を予想

●施設の介護士
慢性的な人手不足により負担が増加傾向にある現在、国による介護士の処遇改善や事業者によるICTなどの設備投入や職員の負担軽減が行われなければ、今後離職者が増えていくことは避けられないと思います。

人手不足
  ⇓
今より負担が増える
  ⇓
でも業務量は変わらない、寧ろ増える?
  ⇓
頑張ると身体壊したり心を病む
  ⇓
退職する

みたいな負の悪循環が生まれるのではないかと・・・。
私もお金より休みが欲しいと思っていた時期がありました。
今もちょっと休みが欲しいが若干勝ってるかもしれません。

しかし、人員配置基準を満たしていないと介護報酬の減算になってしまうので、よほどブラックな事業所でなければ施設に空きがあっても人手が足りなければ無理に稼働率を稼ぎにいくことは無いかと思いますので、介護の負担も底なしではない様に思います。


●訪問の介護士
特養は現時点で入所待ちも多く、満床若しくは満床に近い施設がほとんどです。今後施設に入れずに在宅で介護を必要とする高齢者が増えていくことが予想されるので、訪問件数も増え、訪問介護士の必要数も増えていくと考えられます。

訪問介護も1日24時間、標準勤務時間8時間の中では物理的に1日に訪問できる件数に限界があるので、職員数が増えないとパンクして受け入れられない事態も考えられそうです。


●ケアマネージャー
相談員の担当件数については居宅ケアマネージャーと施設ケアマネージャーで担当件数の基準が異なります。

居宅ケアマネージャーは1人につき35件が標準で、40件を超えると介護基本報酬の逓減制により介護報酬が減っていきます。この逓減制については、2021年の介護報酬改定でICT導入の実施や事務員の配置をしている居宅介護支援事業所に限り逓減制の要件が40件から45件に変更されています。

施設ケアマネージャーは1人につき100件までとされています。

2025年に団塊の世代が後期高齢者となる為、介護サービスを希望する方が増えることが考えられますが、ケアマネージャーが担当できる件数が決められている為、ケアマネ不足からそもそも介護サービスの入り口に辿り着けないという高齢者が増えることかもしれませんね。

そうなることを考えると、今後ケアマネージャーの需要も現場の介護士同様に高まっていくような気がします。ケアマネージャーには介護報酬の逓減制がありますので、担当件数が今より何倍にもなって負担がすごく増えるということはまずないかと思います。

最後に

新型コロナウイルスによって介護士を含めエッセンシャルワーカーは緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の発令の有無に関わらずずっと厳しい制限の中で生活している方が多いです。その中で労われることもなく、疲弊して介護業界を去った職員も少なくありません。

今後も人材確保が難しい中で、人材確保も大切なのですが、今いる人材も大切にしてほしいなと切に願います。