介護の仕事

介護の仕事は誰でもできる仕事ではない

SNSなどで「介護の仕事は誰でもできる」という発信を時々見かけます。
単純な肉体労働のように思われる方が多いのですが、介護を経験された方や親族の在宅介護をされている方は強く反論されるでしょう。

結論を言ってしまうと、介護の仕事は誰でもなれる仕事ですが、誰にでもできる仕事ではありません。収入が低いと話題にあがることも多いですが、介護士は専門職です。この記事では介護は誰にでもできる仕事ではない理由について、具体的な仕事内容や事故想定を交えて書き綴ります。

基本的な介助

  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排泄ケア
  • 移乗介助
  • 衣類の着脱介助

介護の仕事はこれだけできればいいのか。簡単そうじゃないか。
介護はご飯あげたりオムツ変えたりするだけでしょ?

このような発言をされる方が時々いて、私自身も知人から似たようなことを言われた経験があります。
そんな方に向けてこれから具体的な場面を想定しながら介護の難しさを説明していきます。本当に介護の仕事が誰にでもできる仕事なのか、この記事を読み終えたときまでにもう一度考えてみて頂けると幸いです。

食事介助

〇嚥下機能が低下して、むせ込んでしまうことや痰が絡みが多くなっている高齢者

食事は利用者の嚥下機能に合わせて利用者のペースで提供します。提供する量やペースを誤ると誤嚥して肺炎になる可能性があります。

全量食べることが正解ではない。

嚥下機能が低下してくると、食べ物の飲み込みが上手くいかなくなってきたり、スピードも遅くなってきますし、飲み込みが上手くいかないとむせ込んでしまいます。食事の形態を変えたり時間を置くことでむせ込みが落ち着くこともありますが、判断を誤って無理に食事提供すれば誤嚥して肺炎や窒息することがあります。

窒息した場合の対応、咄嗟にできますか?

窒息は1分1秒を争う事態です。早期に対処をしなければ命を落とします。

入浴介助

〇褥瘡で背中などに大きなポケットができているなど、怪我をしている場合
〇拘縮が強くて、四肢の関節がほとんど動かない高齢者

腕や脚の関節がほとんど動かない方は体位を自力で保つことも困難です。入浴中、湯舟に使っている際に体位を保てず身体がころんと倒れて湯舟に沈んでしまうリスクもあり、傍から離れることが難しいですし、転がってしまわないような工夫が求められます。

〇拘縮とは

関節を動かさないことで、関節や靭帯などの組織が固くなってしまい、関節可動域が狭まること。寝たきりの方や車いすを使用している方に多く見られます。

拘縮している身体箇所をどのように洗身するか
膝、股関節、脇、肘、手指。拘縮して開きにくい箇所を無理に力で開こうとすれば、骨折します。

排泄ケア

〇オムツから便や尿があふれて便まみれ、尿まみれになっている場合
〇拘縮が強くて、胎児のように体が丸まり、四肢の関節などがほとんど動かない場合

便まみれになっている方のシーツ・衣類・オムツの交換できますか?
時間かければできるよ!って思うかもしれませんが、排泄ケアは入らなければいけない人数は1人ではないですし、1人にたくさんの時間をかけていては業務が回りません。スピードが全てではありませんが、スピードも介護にとっては大切です。

移乗介助

〇四肢の拘縮がひどく、関節があまり開かない方

移乗介助は基本の前方介助(介助者が高齢者の両脇に腕を通して背中などを支えながら移乗する介助)があります。他にも様々な移乗の移乗方法がありますが、ここではとりあえず基本の型だけで綴ります。

拘縮して腋が開かない方はどうやって移乗介助しますか?
無理に脇に手を入れようとすれば最悪骨折します。骨折しなくてもそのような方は痣ができやすいです。

膝関節が伸びず曲がったままというような拘縮の場合はどうしますか?
移乗の際にはベッドや車いすに脚をぶつけやすく、怪我を負わせてしまう可能性があります。介護施設で介護士が行っていても痣ができてしまうことが時折あります。

ならどうやって移乗するのさ!?
と思われるかもしれませんが、だからこそ介護・医療の知識・技術が求められる専門職なのです。

衣類の着脱介助

〇拘縮が強くて四肢の関節がほとんど固まりあまり動かない。

伸縮性のある服が介護現場で好まれる最大の理由です。入浴介助の部分で綴った内容と同様、拘縮している部分を無理に広げようとすると骨折しますし、かといって衣類を引っ張れば伸縮性のない衣類であれば衣類が破けるか、利用者の皮膚トラブルを引き起こすかどちらかでしょう。

私も利用者の服を破いてしまったことが何回かあります。

誰でもなれる仕事 ≠ 誰でもできる仕事

介護は需要も高く、無資格未経験でも始められるので就きやすい仕事ではありますが、上記の介助別の説明でも綴ったようにどの介助にも大小様々なリスクが存在します。リスクを回避して利用者の安全を守りながら介助するためには技術と知識が不可欠です。介護職は知識・技術が無いとできない専門職なので、誰にでもできる仕事という意見には違和感を覚えます。

最後に

「誰でもなれる」と「誰でもできる」は混同されがちですが同じ意味ではありません。介護職は「誰でもなれる仕事」ですが「誰でもできる仕事」ではないと思っています。

食事介助は食事提供、移乗介助は車いすとベッド間を移すだけ、衣類の着脱介助は衣類を着替えるだけというのは表面的なイメージで、実際はどの介助も細やかなケアや細心の注意を必要とすることばかりで判断を誤れば怪我をしたり、命の危機に陥ったりと高齢者の安全が脅かされてしまいます。

誤解が解け、介護職は専門職で誰にでもできる仕事ではないことが多くの方に知っていただけることを切に願います。

介護士という仕事 初めまして、介護士Yと申します。 これまで周囲の方に職業を伝えた際に様々な反応をされてきました。もちろんいい反応も悪い反応も・・...