介護の仕事

介護施設で便秘の方の追加下剤が夕食後、眠前に設定されることが多い理由

施設で夜勤をしている方で疑問に思ったことはありませんか?
「追加下剤ってなんで夜なの?」「朝じゃダメなの?」と。下剤について勉強するまで私も同じことを思っていました。なんで夕食後薬、眠前薬に追加下剤の設定が多いのか、そのポイントは内服してから効果が表れるのにどれくらいの時間がかかる薬なのかということ。今回は追加下剤の設定が夕食後薬、眠前薬に多い理由について、薬別に書き綴ります。

夜勤者の不満

私は下剤について調べたり、施設看護師に教えてもらうまでは夕食後薬に追加下剤が多く設定されることに対して、不満に思っていました。夜間はワンオペだったりと人数が少ないのに、夜大変という気持ちがあったのだと思います。今では下剤についてそれなりに理解できているので、なんとも思いませんし、不満に思っていた自分が恥ずかしいです・・・。

私が今勤めている施設でも他の職員が昔の自分と同じように、夕食後の追加下剤を不満に思う話をしているのをよく耳にします。この後に下剤について綴っていきますので、読んで頂ければそのような不満が納得できて解消されるかもしれません。

下剤の種類

下剤には皆さんお馴染みの「ピコ、センナ、センノシド」など、いくつか種類がありますよね。ここからは種類ごとにどのような効果があるのか見ていきましょう。ざっくりどのような効き方なのかと内服にあたっての注意事項なども綴ります。

【ピコスルファート(ラキソベロン)】
ピコも大腸刺激性下剤です。この薬は水分の吸収抑制の作用があり、大腸内を潤わせ便を柔らかくする効果があり、内服後7~12時間で効果が出てきます。急性腹症や腸管閉塞の方への使用は禁忌とされています。

【センノシド(プルゼニド)】
大腸刺激性下剤で大腸を刺激して腸の動きを活発にさせる下剤です。内服後8~10時間後に効果が出るので翌朝の解消を期待して夕食後や眠前に服用されることが多いですね。
副作用には腹痛、下痢、大腸黒皮症が主にあり、急性腹症、痙攣性便秘、電解質失調、妊婦の方への使用は禁忌とされています。

【センナ(アローゼン)】
この薬も大腸刺激性下剤です。内服後10時間程度で効果が現れます。副作用と禁忌はセンノシドと同じです。

【酸化マグネシウム(マグミット)】

塩類下剤という種類で、内服後腸内で重炭酸塩となった後の浸透圧によって大腸内を潤わせ便を柔らかくします。効果は8~10時間で現れます。副作用には下痢と高マグネシウム血症があります。

【レシカルボン座薬(炭酸水素Na)】
直腸刺激性下剤で20分~2時間と短時間で効果が現れます。直腸挿入後に溶けて発生した炭酸ガスが直腸を刺激して腸の動きを活発にします。

【グリセリン浣腸(GE)】
液体で肛門部よりチューブを挿入し注入します。直腸注入後、吸水性の高いグリセリンが腸壁から水分を引き寄せ、大腸を潤わせ便を柔らかくするとともに、大腸を刺激して蠕動運動を促進します。グリセリンは便に溶け込みやすく、油性なので便の滑りやすさも良くなります。副作用には迷走神経の刺激による血圧低下や意識消失、注入量によっては脱水を引き起こすこともあります。数分~10分ほどで排便を促します
※立位での挿入禁止!・・・直腸穿孔や粘膜損傷などのリスクが高まるので禁止とされています。

夕食後や眠前に追加下剤の設定が多い理由

各下剤についてざっくり解説してきましたが、効果時間を見てみると内服してから効果が出てくるまで結構時間がかかることにお気付きでしょうか。夕食後や眠前に内服することで翌朝の便秘解消を期待する為に夕食後薬や眠前薬に設定されていることが多いと思われます。

「夕食後じゃなくて明日の朝食後にしてくれればいいのに・・・」

私の施設でも時々聞く不満なのですが、では朝食後に追加下剤が設定されていたらどうなるでしょう?
効果が表れるのは夕方頃、つまり夜勤者か遅番がケアしなければなりません。朝食後の設定のほうが夜勤者のケアが必要になる可能性が高くなると思われます。

そう考えると夕食後に追加下剤を設定するほうが、利用者にとっても1日便秘が滞ってしまうより朝方にすっきりしてもらえたほうが良いでしょうし、施設によってケアに入るタイミングは異なると思いますが、職員にとっても時間を要するケアが夜間帯に少なくなるほうが事故のリスクも減って良いのではないかと思います。

最後に

取り決められていることや普段の習慣など、そうなった背景が必ずあります。今回の下剤のこともそうですし、知らないと納得できないことがあったり、不満を抱いてしまったりでストレスですよね。無理のない範囲で知識を得て、少しでも不満や葛藤、悩みの少ない、心穏やかな働き方ができることを願います。