初めまして、介護士Yと申します。
これまで周囲の方に職業を伝えた際に様々な反応をされてきました。もちろんいい反応も悪い反応も・・・。超高齢化社会となっている日本では、最近介護の話題がニュースなどでよく取り上げられるようになりましたね。でも具体的にどんな仕事かは良い面や明るい場面ばかりで、多くの人によく知ってもらえていないような気がします。今回は悪い面にも着目して介護士について綴っていきます。
介護士のイメージ
「介護士」って聞くとどんなイメージを持ちますか?
昔は「きつい」「汚い」「給料低い」なんて言われていたこともありましたね・・・。今でもそのイメージはあまり払拭しきれていないような気がします。私の学生時代の友人も福祉業界に入った方が多くいましたが、体力的にきつかったり、人間関係が原因で今ではほとんど離職してしまっていますし、福祉業界以外の友人に仕事の話をすると「大変だね」「自分にはできない」と返されることが多いです。
慢性的な人手不足の事業所も多く、夜勤や身体介助の負担から身体や心を壊して離職してしまう人もまだまだ多いのが現介護業界の現状でもあります。給料も各世代平均年収などと比べるとやはり平均を下回りますし、マイナスイメージの払拭にはまだまだ時間がかかりそうな気がします。
介護の仕事
介護士が働く場所も老人ホームなどの入所施設・デイサービスなどの通所施設、病院、利用者のご自宅(訪問サービス)と近年幅が広まりつつありますが共通するところで介護士の仕事は大きく3つに分けられます。
身体介護 | 「介護」と聞いて真っ先に思い浮かぶと思いますが、日常生活で介助を必要とする方に対して、食事・排泄・入浴・移動などの介助を指します。 |
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生活援助 | 買い物・掃除・洗濯・調理などの身の回りのお世話のことを指します。 |
その他 | レクリエーション・余暇活動・リハビリなど。 |
上記3つの内容を上げましたが、相談業務以外の介護現場で主な業務となる身体介護についてもう少し説明すると下記のようになります。
食事介助 | 利用者の嚥下機能に合わせた、飲み込みやすいように刻まれている食事やペースト状の食事などを利用者にとって負担が軽減するようにまた誤嚥しないように介助します。無理に食事を提供することで、誤嚥性肺炎などのリスクがあります。 |
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排泄介助 | 利用者の羞恥心が最も伴う介助の1つです。トイレでの介助とオムツ交換する介助の2種類があります。どちらもカーテンや扉を閉めるなど、利用者の尊厳を守りながら介助します。オムツの場合、皮膚トラブルのリスクがあるので、清潔を保つための工夫やオムツ類の選定が重要となってきます。 |
入浴介助 | 介助者の前で脱衣したり裸となるので、排泄介助と同様に利用者の羞恥心が最も伴う介助の1つです。在宅やグループホームでは一般的な浴室での入浴となることがほとんどですが、老人ホームでは機械浴が一般的で、シャワーチェアに座ったままお湯に浸かれる座位浴と、寝た体勢で浴槽に浸かる臥床浴などがあります。全身の皮膚状態を見ることができるので、身体の傷や皮膚トラブルの有無を確認することも重要となります。 |
移乗介助 | ベッドと車いす間などの移乗の介助をすることで、介助の方法はいくつかありますが、介護者にとっては腰痛など身体を壊す原因となりやすい介助の1つです。 |
〇やっぱり体力的に、身体的にきついのか
確かに介護は重労働で体力の必要な仕事です。介護を「きつい」とイメージされている方は夜勤で生活リズムが狂うことや腰痛からそのようなイメージを抱くのではないでしょうか。利用者を移乗介助する際、相手の体格などにより介護者の身体に負担がかかることは否めません。しかし、なるべく身体に負担のかからない様に、介護現場には利用者を持ち上げてくれるリフトや、利用者の身体を持ち上げなくても少しの力で移乗介助できるスライドボード、腰にかかる負担を軽減してくれるパワースーツなど様々な介助用品がありますので、それらを使用することで大きく負担を減らすことが可能です。初任者研修など基礎的な研修で習得する介助技術だけでは、やはり限界がありますので、介護は技術面でも奥深いです。
〇夜勤は大変そう
夜勤は仮眠時間が2時間ほどの事業所がほとんどで、睡眠時間が取れないので健康に悪いイメージがありますよね。結論としては健康にはよくありません・・・。生活リズムが崩れてしまうことも否めません。ただ、介護現場の夜は皆さんが思うほど大変ではありません。私たちが普段夜眠るように、利用者もほとんどの方は夜眠ります。夜間は排泄ケア、いわゆるオムツ交換や利用者の急変時の対応が主となります。夜勤は施設ごとに手当ての金額が異なりますが、夜勤手当てが支給されるので、夜勤なしの勤務よりは給料は良くなります。また、他職員との接触も少ないので、夜勤専従での雇用を望む方もおり、人によってはデメリットばかりではないようです。
介護の資格
国家資格である介護福祉士や社会福祉士を始め、公的資格でも介護支援専門員や介護職員初任者研修(ホームヘルパー)などがありますが、介護の仕事自体は無資格でも始めることができます。資格を取得することで資格手当が出たり、チャレンジできる職種・業務の幅が広がるなどのメリットがあります。介護福祉士や介護支援専門員の受験には実務経験も必要になる為、無資格の方でまず資格取得を目指すのは、介護職員初任者研修(ホームヘルパー)が一般的かと思います。また、資格取得には事業所が受講料などを補助してくれるところも多い為、資格取得は年々しやすくなってきていると言えます。
介護職員初任者研修 | 介護の資格の中で最も基礎となる資格です。基本的な介護の知識・技術を身に着けていることを証明する資格で、最短1ヶ月で取得可能。取得していると就職活動の際に有利になります。訪問介護員になる為には、必ず必要な資格です。 |
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介護職員実務者研修 | 初任者研修の上位の資格で、よりよい介護サービスを提供するための考え方や介護知識、高度な介護技術を習得する内容になっています。介護福祉士の取得を目指す方には受講必須の資格です。 |
介護福祉士 | 介護のスペシャリストと評価される資格。数年前に受験資格が変更され、3年の実務経験に加え、実務者研修の修了が必須となっています。介護現場以外でも介護の相談や指導を行うことも可能となる為、キャリアアップが期待できる資格です。多くの法人では取得後より資格手当が出る為、給料アップにも繋がります。 |
社会福祉士 | 主な仕事は相談業務ですが、働く場所は施設以外にも行政機関や医療機関など様々な分野での活躍が期待できます。受験には大学や養成施設へ通う必要があり、試験の出題範囲もとても幅が広い為、合格率が20%~30%ほどの難易度の高い資格です。 |
介護支援専門員 | ケアマネージャーと呼ばれ、主に利用者とサービス提供を行う事業者との調整やケアプランの作成を行います。介護福祉士や社会福祉士などの国家資格に基づく業務を5年以上(900日以上)従事していることが受験資格となり、合格率も20%を切る為、難易度の高い資格です。 |
待遇
厚生労働省が発表した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、取得している資格や年齢によって、介護職の中でも年収に大きな幅があるようです。年々少しずつ賃上げされていますが、他業種に比べるとまだまだ劣っているのが現実です。
資格別 | 月収 | 年収 |
無資格 | 315,850円 | 3,790,200円 |
初任者研修 | 301,210円 | 3,614,520円 |
実務者研修 | 303,230円 | 3,638,760円 |
介護福祉士 | 329,250円 | 3,951,000円 |
介護支援専門員 | 357,850円 | 4,294,200円 |
相談員 | 343,310円 | 4,119,720円 |
勤続年数別 | 月収 | 年収 |
1年 | 283,480円 | 3,401,760円 |
2年 | 287,940円 | 3,455,280円 |
3年 | 291,010円 | 3,492,120円 |
4年 | 296,700円 | 3,560,400円 |
5~9年 | 307,980円 | 3,695,760円 |
10年~ | 350,820円 | 4,209,840円 |
介護士(無資格)の勤続年数別と資格別の平均月給・年収です。介護分野で最も給料が良いのが介護支援専門員、介護現場に限るとやはり介護福祉士を持つ方が給料面で優遇されているようですね。あくまで平均ですので地域や法人、企業によっては表の金額を超える場合もあれば下回るところもあるでしょう。
たぶん下回る場合は圧倒的に多いです。
〇福利厚生がしっかりしているところも意外と多い
法人や企業によっては福利厚生がしっかりしており、系列病院や施設の費用が割引されたり、レンタカーや宿、観光施設などのレジャー関連の割引があるところも多いようです。就職や転職を考えている方はその法人、企業の福利厚生についてもきちんと確認して給料以外でどのようなメリットが得られるか確認することも重要となってきます。
これからの介護
第1次ベビーブーム(1947~1949年)の時に生まれた団塊の世代は現在約800万人いると言われており、その方たちが2025年に後期高齢者(75歳)となる為、2025年には介護・医療の需要が急激に高まるとされています。「2025年問題」と言われていますが、団塊の世代が後期高齢者となることで、国民の4人に1人が高齢者となり、医療・介護の需要や社会保障費が急激に高まる為、介護業界でも人材確保が最優先課題の1つとなっています。介護業界の人手不足には少子高齢化や労働人口の減少に大きく影響されており、またマイナスイメージが未だ根強い介護業界では、近年介護ロボットやパワースーツ、外国人労働者の雇用など進められていますが、まだまだ人手不足の解消には困難を極めている状況です。
介護現場の人手不足に伴い、受けたいサービスを受けられない「介護難民」も増えると言われています。施設入所の待機者も年々増えてきており、現状のまま人手不足が続くと施設入所サービス、訪問サービスも受けられず家族が自宅で介護せざるを得ない未来がくると言われており、既に起き始めているとも言われています。そのような未来にならないためにも、今後国の人材確保の支援や現役介護士たちの処遇改善、事業者による環境・待遇・福利厚生などの見直しに期待が高まります。